こんにちは。
飯田橋のカウンセリングルーム、サードプレイスのナカヤマです。
大変に心にショックなことがあった後、眠れなくなったり、心臓がバクバクしやすかったり、食欲がなくなっても、大抵は自然と元の状態に収まっていくものです。ホメオスタシスとか自然治癒とかの概念で説明されています。
一方で、そのショックな状態が長びいている、つまり、こじらせているのがPTSDです。
PTSDをこじらせている(慢性化、と専門家はいいますが)要因は、わりかしちゃんと解明できていて、それは
『ネガティブな認知』
『回避』
とよばれる二つです。
『ネガティブな認知』とは、トラウマの体験によって生じた「世界は危険だ」とか「自分は無力だ」などの極端で自分の助けになってくれないような考え方(信念)のことを指します。
例えば、「世界は危険だ」という考えを持っていると、家の外で何が起こるかわからない、事故や事件に巻き込まれる可能性(普段は誰も気にしてないほど低いのですが)が気になって仕方がない、というようになります。
また、「自分は無力だ」って心の底で思っていたらどうなるでしょう。
学校や職場などでのびのびと自分自身を表現することが難しくなるでしょうし、宗教やネットワークビジネスなどの勧誘を断われないということが起きるかもしれません。
DVなどで逃れてきた女性がまた新たなDV夫に出会ってしまうのものも、強引な交際の仕方にNOという力がないと自分で信じているという側面もありそうです(但し、加害者はそういう心優しい被害者を見つけるのがすごく上手です)。
もう一つのPTSDを長びかせる要因の『回避』とは、トラウマ的な出来事を思い出さないように、思い出しそうな場所や物、人を避けたり、記憶や感情に触れること自体避けることです。
当人にとっては怖い記憶に結び付いているので、避けたり、苦痛を感じたりするものでも、普通の人にはなんてことないものだったりするのでなかなか理解が得にくいこともあります。
例えば「山手線の上半分」で症状が出る人がいました。
山手線の上半分に乗ることができないし、その駅名を目にしたり耳にすると、発汗や過呼吸などが起きたりします。これは、この人が新宿である傷害事件に巻き込まれたときに、山手線の池袋方面の電車が来るというアナウンスが流れていた、という事情がわかっていないと理解できないことでしょう。
トラウマ的体験をした後に、周囲や自分が信じられなくなったりする考え方に変わってしまったり、出来事を思い出さないように努力したりすることは、至極当然ではあります。
でも一方で、「ネガティブな認知」と「回避」を持ち続けてる限り、PTSDはなかなか慢性化して治癒に向かいません。そこがいつも悩ましいところです。
すべてのトラウマ焦点化心理療法は、PTSDを長びかせるこれらの二つの要因に、アクセスする(順番や方法みたいなものに違いはありますが)ことで回復を促します。
その時に、回復したい(だからちょっとチャレンジしてみようかな)という気持ち、というか好奇心も大事です。
トラウマからくる症状がどうやって私たちの行動や考え方を規定しているのか知ると、謎が解けたようなそんな気持ちになることがあります。
だから、心理療法って辛いばかりではないのです。
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